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ボードゲームに風が吹く(2)

2015年6月9日 - ボードゲームに風が吹く / 連載

北野 克哉

#2 どうしますか? 海外ボードゲームはじめの一歩

今回から少しずつ、ボードゲームの世界を知らない皆さんに紹介していこうと思う。思うわけだが、これは本当に神経を使う行為で難しい。この無限の宇宙の玄関役を担うわけであるからして責任も重大だ。もし、私の玄関が気に入らなくても他の玄関がいたるところにあることだけは覚えておいてもらいたい。

さて本題に入ろう。私は、これまでも個人レベルで沢山の人に海外ボードゲームの楽しさを広めてきた。一番手っ取り早い方法は“やってもらうこと”である。元も子もないのだが、例えば前回のコラムのような話をして「私もやってみたぁ~い♡」と言われれば、ゲーム会を開いてさしあげ、遊んでもらい、今も広がり続けるボードゲーム宇宙への門を開放してきた。
だいたいのパターンとしてまずは、(相手にもよるのだが)時間のかからない軽めのゲームを次々とプレイしてもらう。例えば、「おばけキャッチ」というカルタを何段階も進化させたような子供向けゲームをやってもらい「子供向けでこんなに面白いの?? 子供の頃からこんな脳みその使わせ方してるの?」なんて驚いてもらったら、「もっとホイップを!」という見た目にも可愛いケーキを切り分けるゲームで「え?? ケーキを切りわけるだけなのに、こんなに戦略とか駆け引きがあるんだぁ」と感心してもらう。その感心冷めやらぬうちに「キャプテン・リノ」というカードを折って積んでいくゲームを始めて「なんでカードを積むゲームにしようって思ったんだろう?」と、不思議がらせて…といった具合にとにかく様々なバリエーションをみせて楽しませるのだ。
海外のボードゲームの面白さの1つに<異常なバリエーションの豊富さ>というのがあるので、すごろく系のゲームしか遊んでこなかった多くの日本人達にはとても新鮮で、有効なやり方だ。これで軽いゲームを4〜5つ楽しんでもらい、相手がゲームに慣れてきたら、好みを見ながらもう少し時間のかかる戦略性の強いゲームに移行していく。
我々はこのパターンで仲間を増やしてきた。

obake1「おばけキャッチ」: カードを見て、木製のオブジェを取るカルタのようなゲーム。あるルールにより脳が熱くなるほど盛り上がる。

 

 

 

 

 

 

hoippu1

「もっとホイップを」: ケーキを切り分けるゲーム。しかし相手との駆け引きが凄い!

 

 

 

 

 

 

やったことのない人にとって、我々のようなボードゲーム好きに教えてもらうのは非常にラッキーで、上記のように沢山のゲームの中から選りすぐりの初心者向けのゲームを、ルール説明書を読むことなしに次々に楽しめるのだ。ちなみに、私が仲間と始めた時は違った。店員さんに設定や大まかなルールは教えてはもらうが、持って帰って皆で説明書を読むところからのスタートである。ごくたまに日本語訳が良くないものもあり(これが我々日本人がドイツゲームを遊ぶ上での欠点の1つでもあるのだが)ルール理解に苦しめられたこともある。長時間説明書を読んで結局わからないまま終電を迎え、チクショーを14回言って諦めて帰ったこともあった。だから、繰り返しになるが、我々から教えてもらえる未経験の人たちは超絶ハイパーウルトララッキーなのだ! 確信を持ってそう思っていた。本当に、そう思っていたのだ、本当に!! ただ、最近になって、ある別の思いが頭によぎるようになった。

(いや、苦労して説明書を読んでいた当時、実は頻繁にボードゲームから風がふいていやしなかったか?)

と。  前回のコラムで書いたのだが、私は“面白い!”と感じた瞬間にボードゲームから吹く風を感じる。そして、思い返してみれば、仲間と説明書に苦戦していたあの当時、幾度となく強い風が吹いていた。まだ全員があまりボードゲームというものを知らず、もちろん買ったゲームのルールを把握しない状況で付属の説明書を読みはじめ、うっすらとそのゲームの全体像が見えてくる。それでも面白いかどうか確信を持てないまま、恐る恐るゲームを開始してプレイをしていく中で、説明書には書かれていないこのゲームの深さや面白さを完全に理解した瞬間! “なるほどぉ~、こういうゲームなのか!! これは面白い!!”となり、その瞬間とんでもない突風が吹くのだ! あまりの風の強さに、被っていたパンティが後ろに吹き飛ばされたこともある。そのことを思い出した時、ふと、ある疑念がわいた。
(もしかしたら、我々が親切にルールやそのゲームの面白さを説明してしまうことは、把握していく過程の楽しさと、理解した瞬間の喜びを奪っているのでは…?)

これは大いに有り得る話なのだ。確かに我々にゲームを教わるのは非常に楽チンだ。
説明書を読まなくてもいいし進行もスムーズ。ハズレゲームに当ってしまうこともすくない。しかし、これは、林に捕まえに行くこと無く、いきなり少年のカゴに大きめのカブトムシを入れてしまうような、無粋なことではないか? 最近はそんなことを思うのである。
そこで、皆さんに提案したいのは、” 気の合うボードゲーム未経験の仲間だけを集め、買ってきた海外ボードゲームをゼロからプレイすること” である。大人がボードゲームというキーワードで人を集める厳しさからして、とても難易度の高いことを言っているのは承知だが、理想はこの形なのである。
この一歩で強風が吹けば、あなたはボードゲーマーにグッと近づくのだ。

しかし経験上、、「だったらいいや」とやらない人たちの背中を沢山見てきたのも事実。それ故に別の提案もさせて頂く。面倒で一度もやらないくらいならば、経験者の開く会に参加して、お手軽に楽しんで欲しい。スタート時の風が少し弱まったとしても、ボードゲームの世界では、まだまだ色々な種類の風が吹いているからである。面倒を理由に足を踏み入れないことが一番もったいないのだ。

・・・長くなってしまった。
これは私がこの世界に人を誘うのにこれだけ神経を使っている事の現れなので許して欲しい。自分は運良く最高の形でボードゲームにハマることができたと思っている。皆さんにも同じような道筋を提案出来ればというおせっかいな親心なのである。

さてさて、まだやったことのない皆さ〜ん! 1回きりの初めての海外ボードゲーム体験。今日提案した2つの選択肢。<経験者アリで体験するか>、<ナシで体験するか>どっちを選びますか?
どちらかを選べば、どちらかは選べない。これがまたボードゲーム的な二者択一で、初めてを済ませてしまった私からしたら、とっても羨ましいのである。ゆっくりと時間をかけて悩んで欲しい。

 


★おまけ★
素人にしったかできるボードゲーム知識
「ゲーマージャンケン」

janken_img

外のゲーム会に行って知ることになる『ゲーマージャンケン』。
このジャンケンを使えば、劇的に「あいこでしょ!」の回数が減り、大人数であっても早く勝者が決まる!  通常のジャンケンのルールに、それよりも優先されるルール“人数が少ない方が勝ち”が加えられたもの。

■ ジャンケンをして、少数派が勝ち、多数派は負ける。
(例>グー3人、チョキ2人 パー2人⇒ まず、グーの負け)
■ 同数だった場合は、通常のジャンケンが適用
(例>グー3人 チョキ2人 パー2人⇒ パーの2人は負け)
■ 残った者同士で繰り返す
(例>グー3人 チョキ2人 パー2人⇒ チョキ2人で再びジャンケン)

さっさとスタートプレイヤーを決めて、早く大好きなゲームを開始したい、賢くてゲーム愛の強いゲーマーが作ったのでは? と想像すると微笑ましい。
ボードゲームをやらなくとも、このジャンケンは色々な場面で使える。
それだと、ちと悲しいが。。


◎ 北野 克哉
1976. 5. 6生
1999年ヤングマガジンお笑い新人オーディションに優勝し、芸人として浅井企画に所属。1年で解散。キャイ〜ン・ずんに拾ってもらい同事務所所属の構成 作家に。「関根勤のオレたち妄想族」などラジオを中心に活動。団体「新ボードゲーム党」を立ちあげ、オリジナルゲーム「貨モッツァ」制作などもしている。 最近、急にぬいぐるみによるアート活動も開始した。
Twitter @kitano2010

kitanokao1

 

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