
ヒャクブンはイッケンにシカズ (2)
2015年6月23日 - ヒャクブンはイッケンにシカズ / 連載
テキスト・写真 鈴木一成
◎ Robert Adams
連載初回からあっという間に時間が経ってしまいました。
第2回となる今回からは、僕が自分の体験と絡めながら作品や作家について書いてゆこうと思います。
最初に取り上げるのは Robert Adams の『 The New West 』という写真集。
僕自身が闇雲にカメラを振り回して撮影していたスタイルから、観察する撮影のスタイルに変化するきっかけになった本です。

Robert Adams『 The New West』
僕が写真を撮り始めて数年経った頃に見つけた写真集が Robert Adams の『 The New West』だ。
アメリカ・コロラド州のロッキー山脈の麓にある住宅や高速道路と長閑な風景が映し出されているなんてこと無いモノクロームの写真群。
ドキュメンタリーとしてまとめられてはいるものの、スクエアのフォーマットでシンプルかつ感情を抑えたミニマルな写真であることが、とても気に入った。
若さ故の情動や熱量に任せてシャッターを切ってきた僕からすれば、情緒や感情を廃し、客観性のみを突き詰めてまとめられた作品群は驚くほど美しく感じられた。






Robert Adams『The New West』Second edition published in 2000 by Walther könig
上記写真は全て Robert Adams『The New West』より
左ページに簡単な場所の表記、
右ページに6×6の正方形のシンプルな構成。
先にミニマルと評したけれど、これらの写真からは人の手によって変えられていく当時のアメリカの風景が、環境問題、エコロジー、都市のカオス化と対比するように美しいモノクロのプリントによって再現され、以前のアンセル・アダムスやマイナー・ホワイト等が示した壮大でドラマティックな自然とは対照的であり、ロバート・アダムスは「ニュー・トポグラフィックス」展にてスティーブン・ショアーやベッヒャー夫妻、ルイス・ボルツともに新世代の風景写真の旗手として注目されたわけです。
この「ニュー・トポグラフィックス」展* の流れがあの「ニュー・カラー」へと引き継がれていったことを考えるともっと評価がされても良い写真家なのに~と思います。(注:もちろん評価は得ています)
(*ニュー・トポグラフィックスとニュー・カラー について)
おかげでトポグラフィックなんて言葉を覚えた僕は、主体から一歩引いて観察してからシャッターを切るようになったのです。
1994 撮影
この写真がトポロジカルか否かはさておき、
6 x 6 のフォーマットはやはり良いですね。
◎ 鈴木 一成 /SUZUKI Kazushige
1972年 東京生まれ。桑沢デザイン研究所写真研究科卒。
3年間の渡仏生活を経てフォトグラファーをしながら個展やグループ展で作品を発表。
巡り巡って現代アートの Gallery OUT of PLACE TOKIO にてディレクター業、桑沢で非常勤講師。ゆっくり制作、たまに作品展示。
http://kazu72shige.tumblr.com/
プロフィール写真
©Jun MIYASHITA