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ヒャクブンはイッケンにシカズ (7)

2016年8月1日 - ヒャクブンはイッケンにシカズ / 連載

テキスト・写真     鈴木一成

◎ 鏡と窓

珍しく短いスパンで連投します。
というのも、前回の話の中で “ディスプレイはもしかしたら現在のカメラ・オブスクラなのかも知れません” と言ったことについて考えている時に1978年に *John Szarkowski (ジョン・シャーコフスキー)の企画でMOMAで開催された『鏡と窓(Mirrors and Windows : American Photography Since 1960)』展の事を思い出したからなのです。

 

M&W_Szarkowski

『Mirrors and Windows: American Photography Since 1960』

 

この展覧会はいわゆる表現を、自己を映す鏡か?それとも社会を見る窓か?と約100名、200点余りの作品を両極に分類して提示しました。提示はしたのですが、実はシャーコフスキー自身は「この二つは不連続な関係にあるのではない。どの写真のなかにも二つの側面が存在しているのであり、1枚の写真を鏡派か窓派かのどちらかにのみ分類することは不可能である」と言っています。

僕が考えるに “” と “” も当然緩やかなグラデーションであり、写真表現はその中間を行ったり来たりしています。

リアリティーへの欲望で進化を遂げて来た写真は社会への窓として(その正確性・客観性から)機能し、絵画からそのポジションを奪ったのですが、高度成長とともに普及するTVの出現によって瞬く間にその場を取って代わられました。(この時すでに大衆のリアリティーへの欲望もアクチュアリティーへの欲望にすり替わっているのが重要なポイントなのですが!!!)
このことは1955年にMOMAで開催された『The Family of Man』(企画 : エドワード・スタイケン)によって現出し『Contemporary Photographers』(’66)や『New Documents』(’67)といったコンポラ写真への流れを加速させたとも云えます。それはまさに “窓” から “鏡” へと写真の役割が移り変わって行く瞬間でした。( 話は前後しますが vol.2 でご紹介した「ニュー・トポグラフィックス」展もこの流れの中にあります)

しかし、シャーコフスキーの言葉を借りれば『鏡と窓』によって提示されたのは「ここで展開される基準は “リアリスティック” と “ロマンティック” で定義されることが可能な両極を持つ、一本の連続した軸である」ということです。
僕なりに解釈すると “窓” としての写真は、世界を見る為に美しく正確でそれらはカメラ・オブスクラによって像として現れるストレート・フォトグラフィーであり、“鏡” としての写真は、ストレートに撮られた像が己の内面へとラディカルな変貌を遂げる為に作られた新たなイメージ(シャーコフスキーは当時マニピュレーティッド・フォトグラフィーと表現していましたが…)である。この変化は時代背景もあるけれど大衆の興味がゆっくりと技術から内容へと移行したことと重なるのでしょう。
そして、このタイミングで写真はアートの枠組みの中に曖昧な立ち位置を発見し、その場所に2000年代初頭まで立ち続けて来たとも云えます。
なぜならば  “窓” としての写真が機能する時には化学変化によってに印画紙へ閉じ込められたそのイメージの正確性・客観性があり、そのようにしてプリントされた印画紙の表面には余計なマチエールは一切無く、物理的にもまさに一枚の “鏡” のようであったからではないでしょうか?
“鏡” である写真を見る時に観者はその客観性の中に撮影者の意図を発見し、その途端に写真に映る事物はありのままの姿ではなく、そこに写された姿は「かつて」そこにあったものだと気付き、写真とは虚構の媒体なのか? と戸惑い  “窓” としての写真の在り方に疑問を抱くのです。
このようにして “鏡” と “窓” の間で振り子が動き始め、現代の写真家は “窓” と “鏡” を揺れながら写真と向き合っているのだと思います。

次回 は “鏡” と “窓” を語る中でとても重要だと思われる作家をご紹介いたします。

 

1996_Cordova 1996_Sevilla
( 1996年スペインにて撮影 )

 

 

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◎ 鈴木 一成 /SUZUKI Kazushige
1972年 東京生まれ。桑沢デザイン研究所写真研究科卒。
3年間の渡仏生活を経てフォトグラファーをしながら個展やグループ展で作品を発表。
巡り巡って現代アートの Gallery OUT of PLACE TOKIO にてディレクター業、桑沢で非常勤講師。ゆっくり制作、たまに作品展示。
http://kazu72shige.tumblr.com/

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プロフィール写真
©Jun MIYASHITA

 

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