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TALK ROOM 第5回 ob「あわいにゆれる光たち」

2017年2月7日 - TALK ROOM / TOPICS / 連載

ob 「あわいにゆれる光たち」
Interview report

 

Interview & Text : Rin Hirano
Photo : Yasharu Sasaki


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©2017 ob/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

 

 ob  (オビ) / Profile

1992年生まれ。2011年 Kaikai Kiki Galleryでの個展後、
2013年には shu uemuraとコラボ。近年は海外のアートフェアに多数出展。
ゲームやSNSを身近に育った新世代アーティストといえるob。
大きな瞳の少女をモチーフに繊細で幻想的な世界を表現する。

主な個展歴:2011年「Respiration」、2013年「乙女の祈り」
いずれもKaikai Kiki Gallery(東京)2016年「Art Basel Hong Kong」(香港)
> Kaikai Kiki Gallery /ob


◆ 4年ぶりの個展にむけて

現在までの経緯を簡単に伺ってもいいですか。最初の個展は18歳の時ということですが…?

ob:はい。2010年の10月頃に、カイカイキキへ入らせて頂いて、その後デビュー個展として開催したのが、2011年の展示「Respiration」でした。

2011年におこなった個展をやったあとの印象としては、いまどう思いますか?

ob:ああ~、大変だったなあって…。それまで普通に学生でちいさい絵ばかりで、大きな展覧会はした事なかったので、急に大きなスペースでやることになって、壁埋めるために沢山描かなくちゃならなくて。色々と考えることが沢山増えました。

絵を描き始めようと思ったのはいつ頃で、どういうキッカケでした?

ob:わたしは美術の高校に通っていて、最初は趣味みたいな感じで絵を描いていたんですが、高校2年くらいの時に当時京都にあった小山登美男さんのギャラリーに、下校途中によってみたら、今までに見たことがない絵画だったんですよね。美術手帳とかではよく見てたんですけど、美術館に飾ってある様なアカデミックな絵ではなくて、日本の現代美術の絵だったんですね。

その時は、どなたの絵だったんですか?

ob:
長井朋子さんとか、桑久保徹さんとかでした。グループ展ですけど、ものすごい大きい絵でした。そんな絵を見てわたしもこういう所で展示をしたいなと思うようになって。

その以前からも絵は描いていたんですか?

ob:
中学2年くらいから、友達の影響でマンガの模写をしていて、その時は絵を描くというよりは友達との遊びという感じで。その前はとくに集中して絵を描くっていうことはしなかったです。

どんなマンガが多かったですか?

ob:まあ、少女漫画がおおかったですね(笑)。「りぼん」のマンガとか、目の大きい女の子とかです。種村有菜さんのマンガとか。でもわたしはぜんぜん上手くなくて、友達に凄く上手い子がいたんです、マンガとかも描いてて。でもドンドン描く事が面白くなってきて。わたしテニス部だったんですけど、マンガ描いたり、図書館にいる方が楽しくなってきちゃって、、それがキッカケで美術高校にいったんです。

 

今回の展示の作風を拝見して、前回の雰囲気と明らかに違うなと思ったんですが、、?

ob:そうですね。前回はとくに「Shu Uemura」さんとのコラボレーションもあって、夢の中のお姫様をテーマにしていたので、よけいに抽象的だったかもしれないです。

以前までのと比べると、完成度も違うだろうなと思いました。明らかに扉をひとつバーンとあけた感があって、別人格かなと思える程なので面白いなあと。

ob:あ、本当ですか。でもあの頃考えていたことと、今考えている事って全然違うんです。以前は実際のモノをみて描く必要性っていうものを考えた事が無くかったんですが、今は見たものしか描きたくないというか。風景に関してですけど。

そういう意味では、今回の展示作品では青森や島根や静岡での風景を描いてるようですが?

ob:そうですね。

ちょっと思ったのは、日本の昔ばなしのような原風景に似てるというか。こういう雰囲気は以前の作品にはなかったですよね?

ob:あ、そうですね。たぶん追い求めてるものが違うんだと思います。

じゃあ、やはり4年前からの展示との大きな違いはその辺だったりしますか?

ob:そうですね、青森で都会ではない風景を見てみたりして。わたしの出身は京都なんですけど生まれたのは鹿児島で3歳までいたんですね。その時の母方の家はものすごく山の中で、家自体も祖父が建てたボロボロの家だったんですけど、そのときの風景を原風景でどこか追い求めてる気がしてて。

じつは、私の祖父の家も鹿児島なんです。obさんの絵の海の色って青色っぽい銀の色してますよね?  なんとなく鹿児島の内海のイメージだったんですよね。そういうところで、なんとなく親しみを感じたんですよ。

ob:そうなんですか!? うれしいです。ほんとうはその鹿児島の母方の家もいきたかったんですけど、もう今ないんですよね。

なるほど、、シンパシーを感じる部分があったのかも(笑)

 

◆ 絵を描くこと、作っていくこと

絵を描いてて、シンドイ事とかはあったりしますか?

ob:んん、だいたいはシンドイんですよね、なかなか完成しないっていうか(笑) 。思うようにもっと早く描きたいなとか思います。完成度あげれたらいいのにって。

描くまえから絵の完成イメージとかもあるんですか?

ob:そうですね。だいたい形とか色ムラとか、気になるところがなくなるまでのアラ探しみたいな感じなんですよね。

逆に、制作してて嬉しい時はなんでしょう?

ob:イメージが形になったときですね。頭の中でこうしたいっていうものが、ちゃんと絵として現れてくるとやっぱり楽しいです。絵に関しては楽しいというよりは、完成して安心っていう感じです。

じゃあ、けっこう下書きの段階からイメージはかわらない感じですか?

ob:最近はそうですね、、絵によっては難しくて試行錯誤するものもあるんですけど。

大きい絵になると難しいですよね。

ob:大きい絵は難しいです。小さい絵で習作という形で描きながら、結果を大きい絵でだすみたいにするんです。けれどプロジェクターで写しながら大きく描いていくと、雰囲気は変ってしまうんですよね。

自分好みのちょうどいい筆致ってありませんか?

ob:そうですね、小さい絵だと面相筆で描いてますね。画面に合わせてですけど。でも大きい絵でも顔とか細かいところは面相筆使ってますね。ただ、最近描きすぎないようにするっていうのを目標にしていて。あまり全部明確に描いてゆくとよくないなって感じて。遠近感とかをだすために、遠くの風景は描いたところもぼかしてしまったりして。

 

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今回、青森から(カイカイキキ)ギャラリーへ移設した、小屋のライブペイント作品を手がけた経緯を伺えますか?

ob:最初のキッカケは、青森県立美術館で「ライブペインティングをしてください」という話があったからです。
2013年にここ(カイカイキキ)のギャラリー空間にカンヴァスを張り込んでライブペインティングをしたとき、青森県美の学芸員さんに来ていただいて、面白いと言って頂いて。
それで青森県立美術館でもなにか出来たら、という事で考えてコンパクトな空間の「小屋」の形にしたんです。それで、せっかく小屋という形で描くのなら、絵の構図も小屋ならではのものがいいと思って。小屋の左右の壁に「阿吽 (あうん)」を模したような絵を配置したり、天井には寺社にあるような天井画のような絵を配置したりしてみました。

では小屋のペイントはカンヴァス作品とは、ちょっとテーマも違う感じになりますね?

ob:そうですね。今回はインスタレーションと絵画の作品、って感じですね。

今展示のオープンニングイベントでの菅原さんと鎌野さんとの音楽とのコラボレーションは、どういったキッカケなんですか?

ob:最初は菅原さんの方と面識があったんです。わたしがやった2011年のカイカイキキギャラリーでの個展で、その時から菅原さんがカイカイキキの方と親交があって、菅原さんの音楽を使ってわたしのPVみたいなものを作ったんです。その時に出会いのキッカケがあって、その後2013年にもここで個展があったんですが、その際も一緒にライブパフォーマンスをやって、その時に鎌野さんもつれてきて頂いて、それがすごくうまくいったんです。なので次はぜひお二人を呼びたいなと思っていて、それで一緒になにかできればなと。菅原さんと鎌野さんの音楽の世界観がすごくわたしの世界観とマッチしていたので、お願いしたんです。

映像(プロジェクター作品)の方の音楽については、別の方ですか?

ob:そうですね。映像は自分で普通のコンパクトカメラで撮ってるんですが、そちらの音楽は生のピアノの音を使いたくて、音楽の作り方もなんか野性的というか、感覚的な方にしてみたくて、今年知り合いを通じてあったジャズピアニストの方にやって頂いてます。

今回は、他にも“ sora tob sakana ”さんなど、ジャンルを越えてコラボレーションしていますけど、他に行ってみたいコラボレーション等はありますか?

ob:立体と一緒になにか挑戦してみたいですね。

個人的には、絵の構図とかを見ると“ 写真 ”も合いそうかなと思ったんですが、、?

ob:なるほど。撮ってもらった風景を描くとかみたいな感じで、、たのしそうですね。

 

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展示に向けて、村上(隆)さんからアドバイスを受けたりもありましたか?

ob:今回の個展は“自力でおこなう”っていうのがテーマになっていて、アーティストとしては、きちんと独り立ちしてゆけるという教育方針もあるので。
もちろん絵画に関してはアドバイスを下さるんですが、展覧会の配置とか、小屋を作る時に誰を呼ぶとか、コラボレーションのことなど、全部わたしがやっています。

作品のレイアウトは、悩みそうですよね?

ob:そうですね、似通った構図があったりするので。でも物語を読んでるようなイメージになればいいなと思って。

自身では絵画作品の中にも、ストーリーがあったりするんですか?

ob:いいえ、絵に関しては全然ストーリーはなくて。ストーリーを設定してしまうと、わたしは絵画がじゃなくなってしまう様な気がしているんです。
女の子が、何かになる前と何かになった後の中間を描きたいと思っているんです。だから観る人が、それぞれ感じてもらえばと思います。たぶんその人の人生とか、記憶とかで、物語は変わるんじゃないかなと。

自分自身を投影した女の子の絵があったりしますか?

ob:いいえ、最近はないんです。
作風がかわってきて、風景画をいまの形で描くようになってからは、自分のことを描かなくなっています。
ただ以前は、それこそ脳直ツイートみたいな感じで自分自身の絵を描いてたかもしれないです。

そういう意識の変化は、やっぱり作品ともシンクロしているような感じかもしれなですね?

ob:そうかもしれない。今は絵のためのイメージという感じですね。

 

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◆ これからの事

まだ色々な理想もあると思うんですが、今後やってみたい事とかはありますか?

ob:映像をつくってみて楽しかったので、映像をつくれるようになりたいなと思います。絵画作品をベースにはしてゆきたいと思っていますけど、絵画だけだと自分が表現したいなと思っているのに限界があるというか。VRとか凄いと思って、、。

話題ですよね(笑)

ob:ドローイングのVRというのがあって。例えば、 “ 宇宙人が水晶を見ていて、その水晶の中に人間が生活していて、人間がいる草原のなかに、虫の生活がある …. ”みたいなところまで描けるっていうのがあって… 「スゴいっ」と思って。そういう事を自分の絵の世界観でやれたらスゴいだろうなって。それもそういう事が普通になっていくのだろうなって。
ただ、実はわたしデジタルで絵を描くのがあまり得意じゃなくて、、、。

そうなんですか?!  デジタルのスキルってSNSでやっていくと必須になってきませんか?

ob:はい、必須です。必須な感じなんですけど、どうしても苦手なんです、、。
ツイッターとかに自分の絵をあげても、原画の良さは消えてしまうんですよ。やっぱりデジタルでの絵の方が、キレイで発色がいいですし。
絵画が好きな人はいいんですけど、若い世代の人達には、印象として重く見られて、やっぱり軽いものの方が美しく見えたりすんだろうなって。

うーん、価値観の差もでてきてるんでしょうね。そこは若い世代が「絵画」という視点で、どれくらい興味をもつ人がいるかなのかも知れないですが… 。

ob:そうですね、 “ユーザー”にもよると思うんですけど。でも、わたしがアニメっぽい絵を描いてる人間でもあるので、やっぱりイラストとかが好きな人達の目も気になるんです。そういう方向も一緒にやっていけたら良いんですけど。

SNS世代の重要なアーティストとしての紹介は、デビュー当時の頃からですか?

ob:そうですね、その言葉が一番盛り上がっていたのはその頃ですね、まだ新しい感じがあって。けれど、今は珍しくなくなってきてるんですよね。

そうなると、現在は新しいキーワードのようなモノが必要だったりしますか?

ob:いいえ、私自身はそんなにこだわらないんです。けれど観る人にとってはそういうモノがあった方が、判りやすいのかなと思いますね。

デビュー時から、SNS時代のアーティストといわれる事が多いと思うんですが、実際にSNSなどで投稿しはじめたのはいつ頃だったんでしょう?

ob:たぶん、中学2年生くらいの頃からです。最初ヤフーブログだったんですけど、その頃は自分でタグとかを使いながら、サイトを作ってて。高校生になってからは pixiv ができたり、ミクシィもやってましたね。あとは“お絵描き掲示板” っていうのがあって使ってました。お絵描き掲示板って、哀愁を感じるんですよね。

絵を描きはじめて、SNSを使って描いてきたなと意識することはありますか?

ob: 最近感じているのは、ネットではある意味責任感がないというか。匿名性が高くて、言った事にも責任とらなくてもいいみたいな感覚があったと思うんです。けど最近はもっと身体的な感覚になってるというか。実際にある場所に行ってそこ場所の絵を描くとか、そういう事をしているんです。それまでフワフワしていたところから、生身を「取り戻す」という感覚なんです。

“取り戻す ” ですか?

ob:そうですね… 元々あったものというのか、無くなって感じていなかったというのか、、。ある意味、堅苦しかったというか、そういうモノを避ける事でネットの中で楽しんでいたんですけど、でもそれってちょっと違うなって。この6年くらいで感じてきたというのはあります。でも、その感じってわたしだけじゃなくて、まわりの人の話とかを聞いていても、ツイッターとかでもあまり呟かなくなったとか。

現在も、色々とSNSでの更新は続けているんですか? 絵をアップしたりも?

ob:そうですね、もう止められないんですよ (笑)。習慣ですし、あと影響力はすごくあるんで、自分の展覧会きてもらいたくても、情報を知らなかったら来てもらえないので。

生活の中にまではいってたりはしないんですか?

ob:ああ、最近はもう割り切ってしまって。昔はツイッターでも”脳直ツイート”っていって垂れ流す感じだったんですが、あれが苦しくなってきてしまって。ここ2、3年ですね。作品にもでてるかもしれないですね。

デビュー当時の絵からも、作風の変化は大きく感じるので、別の見せ方もアリなのかなと思いました、個人的には。

ob:わたしが思ったのは、SNS世代でネットの交流が主な自分達のような人々が、実際に田舎などに足を運んで、そこでの経験を作品にしているという変化自体が面白いのかなと考えていて。そういった変化自体が、ふさわしいキャッチーな言葉に繋がればいいとは思います。

今も”SNS”というニュアンスは、やっぱり過去のそのものと常に変ってきているのでイメージも難しいですよね。若い世代の中ではデフォルトになってきているけど、まだまだ年配層には新しいツールでありつづける、みたいな部分もあるし。

ob:そうですね。最近はもう、SNSよりもシェアハウスとかの方が強いのかなって感じることもありますし。そうなると、ネットで交流しなくてもいいんだろうなって。共同体みたいな。

そういう傾向はありますよね 。SNSへのカウンターとしてなのかは判らないけど、逆に現実での交流の方向に向かう動きは感じますね。SNSをあえて遮断していくような。ただ、obさんがSNSを身近なスタンダードのツールにしてきた世代のコアな存在として活動してきた事は、間違いないと思います。

ob:そういう世代のなかで、変化は体現してきたと思います。

そういう意味では、同じ世代アーティストのシンボリックな存在だと感じました。

ob:ありがとうございます。ぜひ実際に作品を観にきていただきたいと思います。

( 2017.1.26 Kaikai Kiki Gallery 於 )

 


 アーティストobさんの4年ぶりとなる個展「あわいにゆれる光たち」へ伺い、ぼくが絵を見ながら感じたのは懐かしさだった。それが、イメージとなっている少女の印象なのか、薄淡く光る色調なのか、その時はいまいち判らなかったのだけど、色々な話を伺って、描かれた情景のエピソードを聞いて納得した。

SNSを身近としてきた層は、obさんの世代には確実に存在している。そして、そのなかで皆、現実と虚構の狭間のなかで自分の存在意識を試行錯誤してきたような気がしている。そんな「変化」を体現して見せている象徴的なアーティストだなと感じた。

obさんの作品それぞれに、データや印刷では伝わらない、精密なクオリティと、「モノ」としてのエネルギー量を宿すオーラを感じる。
ぜひ実際の作品を見てもらいたい。 (Rin Hirano)

 

==  展示情報  ==

ob 「あわいにゆれる光たち」
カイカイキキギャラリー
2017年1月20日 – 2017年2月23日
閉廊日:日曜・月曜・祝日

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