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TALK ROOM 第6回/ 岡本太郎賞 さいあくななちゃん インタビュー

2018年3月23日 - TALK ROOM / 連載

さいあくななちゃん
第21回 岡本太郎現代芸術賞 (TARO賞)
岡本太郎賞 受賞インタビュー
「生きてるから描いている。生きていれば絶対満足なんかしない。」

 

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 2018年 2月、第21回 岡本太郎現代芸術賞 [ TARO賞 ] の授賞式がおこなわれグランプリとなる岡本太郎賞には、無数の女の子の絵の中にピンクの絵の具で空間を塗りつぶす展示をみせた、さいあくななちゃんの<芸術はロックンロールだ>に決まった。

以前アパートメントの対談企画にも協力してくれたさいあくななちゃんに、今回はみごと受賞した太郎賞へのエピソードと続けてゆく作品制作への想いを語っていただきました。

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(画像提供:さいあくななちゃん)

第21回 TARO賞 -岡本太郎賞 作品 <芸術はロックンロールだ>
500×500×500cm /紙・キャンバス・ビニール・ギター ほか

 


 

◆ TARO賞へのきっかけ

— 岡本太郎現代芸術賞に応募したきっかけは?

わたし、縄文土器が好きなんです。それで縄文土器を調べていたときに岡本太郎がでてきて、、。そこで岡本太郎のことも調べ始めて、もちろん太郎も好きで。
けど本当に、縄文土器は好きすぎて。縄文土器を探しにいきたくて、仕事を調べて考古学関係で働いたりもしたんです。でもそこでいじめられて辞めたから、ちくしょー!!って思って…。でも今回 TARO賞を貰ったからざまあみろって感じだなあって (笑)

 — 今回、受賞するまではどんな気持ちでした?

わたし焦ってたんですよ。この1,2年なんかうまくいかなくて。下の世代もどんどん来るし。すごい人っていっぱいいるじゃないですか?!もうこのままじゃどうにもならないと思っていて。

— ななちゃんから、「焦る」とか「下の世代への意識」って意外なのかなあと?

焦りますね。毎日焦ってます。でも皆そうなんじゃないのかなって思っちゃうけど。どんどん凄い人でてくるし。音楽が好きってこともあるんですけど、音楽の人ってメジャーデビューのタイミングとかめっちゃ早いじゃないですか?!そんなのを見てるともうコワくなってきて…。
もともと 奈良美智 さんが好きなんです。奈良さんがあまりギャラリーとかへ売込みに行かなかったっていうのをきいてカッコいいなって思ってて。それを意識して学生の頃は「公募展なんかやんねえぜっ!」っていうスタンスだったんです。でもどうにもならないことばかりで…。
それで去年は大小問わず公募展に応募して。けどそれが全部落ちてしまって、、ああもうダメだあとか思っていて…  (笑)

— そんな中で、切望していた賞でもある岡本太郎賞を受賞して、どうですか?

ビックリしましたよ、「マジでっ!」って。授賞式の時も緊張してて、まさか自分がって感じです。あと今回審査員の方々に初めてお会いして選評して貰ったんですけど、なかでもよく知ってる椹木野衣 さんとかに会って、うわあスゴいなって。この人、本当にいるんだあって。

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— 受賞してから1ヶ月くらい経つけれど実感はどう?

まだあんまり実感ない感じです。
街中で握手を求められるわけじゃないし、特に何にも変わんないんですよ。アルバイトいかないとご飯たべれないし、全く自分の生活は変わらないですよ。それでも勝手に2chのスレッドとかは立ってるし、ムカつくことしか起こってないんですよ(笑)

—  賞を穫ることは満足感に繋がらなかった?

なんかこういう賞をとると、それで満たされたりする人いるじゃないですか?!  わたしも受賞する前は満たされるという感覚になるかなと思ったんです。けどそれが全くないんですよね。ちゃんと伝わらない人って絶対にいるから、悔しいじゃないですか!どんなに色々いわれようと、その人達に伝わってほしいし。でも十人十色ですし。だからいままで満足することなんて一回もないんですよ。むしろめちゃくちゃイライラしてます!

— イライラの理由はどういうところから?

なんか、もう、アンチとかがすごくて(笑)
わたしゴミといわれようが、メンヘラといわれようが、まあ普段いわれてる事なんで別にいいんです。けれどムカつきますよね。
授賞式の帰りも、酔ったおじさんに絡まれて、しかもその後キャバクラの勧誘までうけたり…。もうどうすればいいかわかんないですよね(笑)

— 賛否の意見については、どう自己消化している?

消化できないですよ。ただ、わたし自身は賛否が起こってくれて嬉しいんです。賛否はおこらないとしょうがないと思うんです。悪い方向でも良い方向でも、心はどちらかに動かないといけないと思うんです。平坦なものをやっていても意味ないと思うんです。

— 消化できないものがエネルギーになっている感じ?

そうですね。だから満たされるなんて一生ないと思いますよ。絶対に世の中に良いと悪いとがあるんですよ。全員が好きなんて言わないんですから。
わたしのことゴミでもサブカルでもメンヘラでもいいので、それを見出しにしていってもらえばいいんです。だって悪い事も書かなくちゃ良くならないじゃないですか! 平坦とか平和って何なんですか?!

— 今はそういう感情が、次への意欲にはなっている?

意欲になってます。わたし子供っぽいのかもしれないですけど、本当に煮えくりたぐってんですよ!でも自分で言葉にしてわかるのは、わたし小さい人間ですよ、ほんとうに。いつも小さい事で喧々しててさ…。

 — それは小さい事でもエネルギーに変えられるっていう力かなあ?

そうですね。
わたしの絵を観てくれる方って、音楽とか映画すきな人とか、アイドル好きなと人か、美術館にあまり来ない人とか、色々いるんですけど、なんで共鳴してくれたり涙を流してくれたりしてくれるのかって、絵とか関係なくて根本にある生活力の存在だと思うんです。絵っていう概念がなくても、そういう部分で共鳴できてしまう凄さっていう。
絵って観るのにすこし緊張するじゃないですか? 音楽とかよりもハードルが高い気がすると思っていて、それって息苦しいんです。でも絵を描くのが好きだから、ぎゅうぎゅう息苦しいんです。



◆  わたしの100%を伝えたい。

— 入選していた他の作品についてはどう思いましたか?

どの作品も全部すげえ!って思うし、どれも感動があるんですよ。好きなのは弓指寛治さんの作品 (「Oの慰霊 」岡本敏子賞) です。

— ななちゃんの作品と近い感じの雰囲気かな?

はい。なんか理由もなく「カッケエ!」って思ったし。やっぱりまた焦りましたね。

— 自分と弓指さんの作品との違いがあるとしたら?

あんまり分らないです、そういう分析もあんまりしないから。わたしは悪口がはいってたりしちゃうしさ。怒っちゃうしさ。スマートに生きれないんですよ。(笑)
ひとついえば(弓指さんの作品は)男性的なのかなって気がする。やっぱり女と男って違うから。わたしは、理由やコンセプトもないですし。困ったらやるしかないし「描く!」って感じですし。生きてるから描いてるというか。なんかカッコいい感じですけど(笑)

 

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— 以前と展示空間の印象が違う気がして、それは流していた曲も影響してたかなと思ったのだけど、どうだろう?

以前は、わたしの好きなアーティストの音楽とかを展示に流してたんです。けれど、それでは100%自分が言いたいことではないんですよね。

 — なるほど、既存曲では代弁になってしまうということ?

そうです。代弁してもらってる。もちろん既存の曲もわたしが大好きな音楽で無いと生きていけないほどなんです。だけど「わたしの作品」ってなった時には、やっぱり自分が100%じゃないとダメなんです。だからどうしても自分でつくる(オリジナルの)音源が必要になったんです。そこで違う方の力を借りると自分が薄まる気がしてしまって。自分ひとりでどれだけやれるかっていう事だと思うんですよ。どれだけ自分で絵で描いてみせていくか。
例えば共同でつくるインスタレーションをするとしたら「わたし + 職人」の作業になっていくと思うんです。でもそれは職人の作品でもあるわけですよね。わたしはそこをどれだけ「わたし」にするかっていう事を、けっこう大切にしているんです。やっぱり観てもらうひとりの人と向き合いたいんです。そのひとりの人に届けるためには、わたしはひとりじゃないといけないと思っているんです。

— 鑑賞者とは、1対1での関係を目指したい?

そうです。
例えば、音楽でいえばそのひとりの関係がシンガーソングライター的なやり方だとすると、バンド的な複数グループのやり方も楽しそうだなって思うんです。でもわたしが一番合うやり方は1対1というものだと思ってるんです。
わたし人と馴れ合うのがあんまり好きじゃないんですけど、それは気が合う人ができた時のフワフワ度っていうのが怖いからっていうのがあるんです。そこで上手く生きれない気がして。やっぱりわたしはひとりで作りたいっていうのが大きいです。

— コラボレーションみたいな事とかは?

そうですね。コラボとかならたまに。やるんだったら対バンみたいな感じで、喧嘩レベルのものがいいですね。でもやったことがないから、コワさもありますけど。

— 絵を描く時と、音楽をする時では、自分の中での気持ちの振り分け方があったりするのかな?

とくにないですね。どちらもつくりたいときに作るって感じです。やっぱり、(自分の気持ちが) いちばん温かい時にってことでしょうね。その時の気持ちが音楽に向いてるのなら音楽でいいし、やっぱり絵が好きだから絵かなあ、、とか。理屈っぽくならなくていいと思うんですよ。

— 作品で一貫して描いている女の子の像については想いはある?

なんだろう… この子たちは自画像ではなくて、描きたかったから自然にできていったんです。でも心の中にいる女の子なのかも知れないなって。

— 塗りつぶしてゆく「ピンク」色に意味はあったりする?

たぶんピンクが好きだからっていうだけの理由だとおもう。自分で描いててカッコいいなって思ったのは、ムカつくツイートがあった時に、ピンクで塗りつぶした絵を飾ったんです。そういう嫌なツイートって、色でいうと「黒」だと思っていて。黒なんてイヤなんですよ。つまんないヤツって黒で塗りつぶしてくるじゃないですか?!わたしはそんな暗黒みたいなのにやられたくないんですよ、だからピンクなんです。そんなのに負けないんだからねって!(笑)

 



◆ 絵を描く自由さと楽しさ

— 自分で絵を好きだなと気づいたきっかけは?

高校時代にバンド組んでベースをしてたりしたんですけど、当時の自分は何にもなれないなあと思って諦めてたんですよ。だからその時つきあってた彼氏と結婚すると思っていて、結婚して一緒にすごせればいいと思ってましたから。
だから絵描きよりはデザインの方が就職するのにもいいし博打の人生はやめようと思ってデザイン系の専門学校にいったんです。けどその彼氏にはフラれるんですけど。
専門学校でも最初は誰がみても美しい絵を描いてたんです。けど、そこに非常勤で来てたイラストレーターの先生の授業がすごくて。わたしの概念を全部ぶち壊してきたんです。なんだコイツ!?って思ったんですけど、描いた女の子の顔に赤い絵の具をいきなりバンって塗りつぶされたんです。でもなんかその時すごい気持ちが晴れた気がして。音楽きいてる時みたいに、モヤモヤしてるけど気持ちいいなあって。「こういう描き方ありなんだ、、」って。
その時にわたしこの人みたいになるんだって気持ちになって、そこで絵の自由さとか楽しさとかいうものに初めて気づいて。それからずっと絵を描くのに夢中です。

— その先生との出会いは大きかった?

はい、その先生の存在はおおきかったです。
でもそういう描き方は他の先生からは批判だらけだったんです。就活でデザイン事務所を廻っても、こんな風に描いちゃだめだよとか、帰ってくださいとかばかりで。
そんな時に、K2を紹介されて伺ったら長友啓典 さんに絵を見てもらえた事があったんです。そこで初めて良いって言ってもらえたんです。「描きつづけたら草間彌生になれるよ」と、言ってもらって。マジで!って。それから描きつづけてますよ。初めて人に褒められたから、世界が変わっちゃったんですよ。
それを訊いてからどんなときでも描いてます。どんなに疲れてても、お正月でも、クリスマスでも、なんでもいいから毎日描きますよ。

— じゃあ、今回の受賞作品は学生の集大成の作品に?

はい。全部ではないですけど専門学校の時からの絵もあるので。

— 創作活動のうえで、恋愛感情とかは気にしますか?

うーん…わかんないなあ。今はあんまり気にしてないかな。
わたし高校生の頃とかは恋愛しかなかったんです、すべて捧げてたんです。 怖いくらい相手に四六時中メール打ってたし。完全に依存ですよね。何もかも知らないとイヤだし、そんなに好きになる人ができてスゴかった。でも今はそれと同じくらい絵を描く事が好きなんですよ。

— 彼氏にフラれた経験が自分を大きくかえた?

大きいです。その時なんかこのままじゃダメだと思いました。わたしにプラスアルファがないと、この男は繋ぎ止めれないんだって。人生において頑張ろうって思いました。
たぶんそのまま彼氏とウマくつきあってたら、わたし絵やってなかったですよ。もう結婚して、いまごろ第1子とかいますよ!(笑)

— 想像できないけど(笑)

これでも、フラレて1ヶ月くらい肉じゃがとか作りつづけたんですよ。いい女になるためとか思って(笑)
けっこう自炊はするんです、料理は好きな作業なのかも。絵に限らず何かつくることは好きなんだと思います。

 — エレファントカシマシや銀杏ボーイズは好きだと思うけれど、音楽以外に興味あるものは?

そうですね、、わたしラジオとかお笑いもすごい好きなんです。だから話が面白い人って自分のなかで最強なんです。喋れる人がかっこいいけど、ぶっちぎりで伊集院光さんですね、色々なこと教わってるし。リスペクトですよ。
太郎賞の受賞式の時、伊集院さんが好きなんですっていう話をしたんです。そしたら記者の人に「すぐ会えるよ」っていわれて、舐めんなよ…と思って (笑)
あとは YouTuber とかかな。水溜まりボンド をよく見ますね。それと木下ゆうか ちゃんとか、フードファイターの動画好きなんですよ。

 

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わたしは洋服も音楽も好きなんですけど、そういうモノは誰がスゴいっていわなくても買うじゃないですか。美術ってそこの壁がすこし高いだろうって思うんです。「かわいい!」とか、「これ好き!」とか。そういう感覚で良いと思うんです。(美術も)そういう部分が洋服や音楽みたいになったら面白いのかなって思うんです。そういう処にもイライラする自分がいて、窮屈だったりするんですけど、やっぱりスゴく楽しいんですよね。

— これから先、今の気持ちを維持するための努力が必要になる事があるとしたら?

まだ想像できないですけどね。もしそういう状況になるって、スゴい事ですよね。売れ線の曲をつくるか、自分のやりたいことをやっていくかみたいなことですから…。

— 何年後かにその答えをきけたら面白いかな。

たぶん今と変わらないですよ。まだガラケー使ってるとおもいます。(笑)

(2018.2月某日 下北沢 於)

 

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さいあくななちゃん/   画家
略歴

1992 山梨県富士吉田生まれ
2013 都内デザイン専門学校卒業
2014 当時バイト先の人に絵をみせたら「さいあく」といわれたが、なんかムカつくけど面白いと思い本名「なな」にさいあくを足しさいあくななちゃんとして本格的に活動開始。

 


「第21回 岡本太郎現代芸術賞」展
 2018/ 2/16 〜 4/15   川崎市岡本太郎美術館
ギャラリートーク開催
4月1日(日)13:00~

さいあくななちゃん、大野修平、黒木重雄、橋本悠希、近藤祐史
4月15日(日)13:00~
与那覇俊、黒宮菜菜、横山信人、吉田芙希子、○△□(まるさんかくしかく)

 


Interview/ Text /Photo: Rin Hirano

 

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