DSCN7435 _main1

「ことばをながめる、ことばをあるく」詩と歌のある風景 をゆく

2018年9月13日 - TOPICS / プロジェクト

太田市美術館・図書館  /本と美術の展覧会 Vol.2
「ことばをながめる、ことばとあるく」展
詩と歌のある風景 をゆく


Text:高橋あやな

 

都心をぐるぐる回っている。
電車に乗るのは、長くたってほんの数十分。
文字は画面越しに読んで、なぜだか日々はせわしく過ぎていく。

朝7時。

まだしゃっきりとした空気を切って、歩く。
メトロに乗って、数駅。普段は降りない駅で乗り換える。
「りょうもう」という、特急列車を探す。
長いホームの先には、新しい風景があった。

DSCN7492rew

太田駅に降り立って、北口を出ると、想像以上の至近距離に驚く。
太田市美術館・図書館。
2017年1月に竣工した、まだ若い美術館。
街に溶け込んで見えるのは、草木が生い茂っているから?
きっと、他にもなにかあるはず。

 

DSCN7306re

本と美術の展覧会 vol.2
「ことばをながめる、ことばとあるく——詩と歌のある風景」。
詩と、グラフィック。
詩と、絵画。
短歌と、イラストレーション。

 

「本とは別の居場所を得た詩や歌は、はたしてどのような姿でわたしたちの目の前にあらわれるでしょうか。そしてそれは詩や歌を“読む”という行為に、どのような変化をもたらすでしょうか」――― (企画概要より)

この問いは、新しい鑑賞体験を享受するわたしたちにだけではなく、きっと、まずは作家に向けられた。
紙に活字を印刷する定型を、いちど壊すことの、意味、必要性、得られるもの。
それぞれの、また、タッグを組んだチームの答えが、そこにはある。

 

詩 × グラフィック
最果タヒ、佐々木俊、祖父江慎、服部一成

DSCN7316

DSCN7315 DSCN7341

元々丸められているとはいえ、人の作品を、両手でぐしゃっと丸めるのはそれなりの背徳感がある。
でも、くそ食らえよみたいな、ほんとはみんな嫌いだよみたいな、粗野な気持ち。綺麗なものばかりな訳ないだろっていう軽い失望。
紙が折りたたまれる乾いた音と触感で、呼び起こされる。

 

DSCN7344

相手って、自分が思った以上に受け取ってくれない。
意気揚々と材料を用意しても、ぜんぶは感じてくれない。

01

ここにある言葉がぜんぶすっと入ってくるの、
たぶん、とんでもなく緻密な計算があって、すごいことだ。
わたしたちは、ただ歩いて、感じればいい。

DSCN7352

難しいことなんて考えず、詩に出会う。
心音と、歩く音、目の前の作品。それだけ。

DSCN7319re

気づかないあなたは、それでいいわ、って、言われてるみたい。
日々、クリエイターは批評の対象にもなっているけれど、実はそうじゃない。
先にあるのは表現者で、読者や観客のほうが、実は選別されている。

 

詩 × 絵画
管 啓次郎 、佐々木愛

DSCN7383

 

02

言葉は、肉筆で書くと、その人の姿がより濃く映る。
ときに、思った以上の意味が加わってしまうと感じていて、
いままで自分はそれができなかった。
絵画と手を繋いだ温度感。
主張とか、私欲とか、すぽんと抜けた、たおやかさ。

DSCN7386

肉筆で詩を書くことは、筆で絵画を描くことに、限りなく近づいている。
絵もまた、文学性を持っていて、どこからが文学、どこからが芸術なんて規定は第三者がただ気持ちいいだけの遊びだ。

 

短歌 × インスタレーション
大槻三好・松枝、惣田紗希

DSCN7392

太田市出身で、夫婦揃っての歌人、大槻三好・松枝。
幼さを残す二人のみずみずしい恋心から、若くして小さな子を遺し旅立つことになる松枝と、三好の心情が詠まれる。
この空間には、あまりに静かで、深い愛情がたゆたう。

DSCN7399

短歌から着想を得たイラストレーションと相まって、身の切られるような痛切さを、願わずとも追体験する。

*三好と松枝が生きたのは、太平洋戦争以前からと知る。
まるで今日を生きているみたいな短歌だ。
恋仲だった頃の短歌、「iPhoneで打ったんだよ、思いついたからメモ帳機能使った」って言われても、納得しちゃうリアルさ。

この場所で思わず涙してしまう人がいるっていうのは、本当だ。

( *没年はそれぞれ 大槻三好 1987年、松枝 1930年となる。) 

 

DSCN7416

屋上で、一息。
こうやって県外から来る人もいれば、この庭園でおにぎりを食べてピクニックしている親子もいて。
自由。建物の敷地内だけど、いろんなところで街と繋がっていて、遮断がない。
ここは美術館や図書館である前に、太田という街なんだ。

こんな場所が近くにあったら。そんな想像をする。

DSCN7443

展示を離れて、すこし散策。

 

DSCN7448re

このネオンサイン、部屋に欲しい。
午後は絵本ざんまい! そんな発想、もうずいぶん、忘れてたな。

 

DSCN7373

言葉をながめていると、言葉を無意識的に使って生きる雑音だらけの日常からふと離れて、
自分と言葉の、シンプルな構図に気づく。こんな時代だからこそ、大切にしたい。
これからもわたしたちは、言葉と歩いていくのだから。

きっとまた、すぐ来られる。

 

——————————————-
[ お わ り に ]

印象的な言葉に、最果タヒさんの「展示あとがき」の一説がある。

「言葉というのは、言葉単体では、本当は存在ができない。
声とともに、波としてこの世界に流れ込むか。
文字とともに、結晶としてこの世界に流れ込むか。
どちらにしても、声や文字の形によって言葉は、言葉以上の何かに変容するし、その影響を無視することはできないでいる」。

脳なのか頭なのか、言葉のふるさとが自分の体内のどこにあるのかはいまだに分からない。
それでも確実に生まれた思いを、誰かに伝えるには、声か文字を借りなければいけないというのは、確かにそうだ。
おでことおでこを合わせて伝わったらいいのに、そういうわけにもいかない。

 

DSCN7349

自立しない言葉は、声や文字によって何かしらを付加され、ときに色褪せ、ときに鮮度が落ち、ダサくなる。
最果さんは、そのことに憤りを感じていたんじゃないかと思うし、わたしもずっと、無力感を覚えたまま答えが出せなかったことだった。
考えないようにして、隅っこにやっていたけれど。

最果タヒさんは、自身へ向けた「書くことの本質とはなにか?」という問いにこの展示でひとつの答えを出している。
それはぜひ、現地で直接確かめてほしい。

「読むという行為の変化」という実験的提案は、来場者に「読むことの本質」を問う。決して難解なことではない。言葉はきっと、待っている。歩きに行こう。

[2018. 9.15 改訂]

 


文・ 取材:高橋あやな
写真・構成 :平野 倫  (アパートメントWEB)


協力:太田市美術館・図書館, 小金沢智, サイトウケイスケ


PROFILE
高橋あやな

フリーランスのナレーター。ナレーションを中心に、詩活動も行う。自作によるZINE・詩集『マニキュアを塗った夜は自慰行為ができない』発行を機にタモリ倶楽部などにも出演。ミスiD2019エントリー中 (セミファイナリスト)
https://www.ayanarration.com/

 


【NEWS】
太田市美術館・図書館/  本と美術の展覧会 Vol.2

「ことばをながめる、ことばとあるく -詩と歌のある風景-」

会期   2018年8月7日(火)~2018年10月21日(日)
開館時間  10:00 〜 18:00

出品作家:
最果タヒ、佐々木俊、祖父江慎、服部一成、管啓次郎、佐々木愛、大槻三好・松枝、惣田紗希
空間構成:豊嶋秀樹
ヴィジュアルデザイン:平野篤史

【関連イベント】
ギャラリートーク
9月22日(土)、10月20日(土) 午後2時~午後3時
こども鑑賞ツアー
10月7日(日)午後1時30分~午後2時15分

遠足/ 金山城跡散策
10月16日(火)
講師:管啓次郎、佐々木愛、新井高子(ゲスト/詩人)
参加費 1000円
朗読会
10月16日 (火)
出演者:管啓次郎、新井高子

<各イベント詳細、申し込み方法は美術館HPまで>

【 展示図録 】 2018/ 9/22 発売
「ことばをながめる、ことばとあるく – 詩と歌のある風景」
( 太田美術館・図書館 )

太田市美術館・図書館 Official HP   

 

 

このエントリーをはてなブックマークに追加

› tags: ことば / デザイン / 太田市美術館 / 本と美術 / / 高橋あやな /